本場イギリスの家庭料理を食べたことがある人なら、「イギリス料理はまずい」という意見に異論を唱える人はいないはずです。
フランス料理やイタリア料理のレストランは世界中の至る所にあるけれど、イギリス料理のレストランというのは見たことがありません。
私が初めて「イギリス料理はまずい」ということを知ったのは、学生時代にイギリスのホームステイから返ってきた友人から、イギリス料理の話を聞いたときです。
「ニンジンなんかポンポンポンと輪切りにして、そのままお湯で茹でるだけで、何の味付けもなしだった。それが毎日続くんだぞ。」とボヤいていました。
日本に住んでいた自分には関係ないことなので、あまり気にせずに聞き流していましたが、私もまずいイギリス料理の洗礼を数回受けていたのでした。
■イギリス料理を初体験
私のイギリス料理初体験は、高校生のときにオーストラリアに短期留学したときのことです。
このときイギリス系オーストラリア人の家庭にホームステイをしていたので、当然イギリスの伝統的な料理をごちそうになりました。
ホームステイ中の一番の驚きは、昼ご飯にと持たされたランチのお粗末さです。学校に行くときにホストマザーに手渡された、しわくちゃの紙袋を開けてみると、そこに入っていたのは
- 生のニンジンそのまま
- ジャムを薄く塗っただけで具は一切なしのサンドイッチ
- 市販のジュース
でした。
生のニンジンをどうすればいいか分からなくてしばらく悩んだあげく、捨てるのはもったいないので、仕方なくポリポリと食べてしまったのを覚えています。塩気もなにもない味気ないニンジンでした。
「こんなものを渡されるなんて、自分はホストマザーに嫌われているのかな」と思ったくらいです。
■イギリス料理、第2の衝撃
大学を卒業した後、ニュージーランドにワーキングホリデーで行きました。このときイギリス人の女性に出会いました。
彼女が「これがイギリスの朝ご飯よ」と笑顔で作ってくれたのはオートミール。
好き嫌いなく、少しくらいまずいものでもガツガツと食べられる私ですが、オートミールは衝撃のまずさでした。
「美味しいでしょ。」と聞かれましたが、言葉が出てきませんでした。
「蜂蜜をかけるともっと美味しいわよ。」と言われたので好意に甘えて蜂蜜をかけましたが、余計にまずくなっただけ。
「これが美味しいって、どういうこと?」と謎は深まるばかり。
■イギリス料理がまずい理由
私が経験したニンジンやオートミールだけでなく、イギリス料理は全般的にまずいと評判です。
イギリス料理がなぜこれほどにまで不味いかというと、イギリスでは伝統的に、料理するときにはあまり味付けをせず、食べる人が自分の好みに合わせて塩や酢などで味付けするのが前提とされているからです。
そのことを知らずに食べてしまうと、「何の味も付いていないまずい料理」と感じて当然ですね。
また、イギリス料理は、
- 野菜の食感が分からなくなるほど茹でる
- 油で食材が黒くなるまで揚げる
- 歯ごたえがなくなるまで麺を茹でる
というように、必要以上に食材を調理してしまう傾向があります。
食材の食感を楽しむという習慣はないのかもしれません。
必要以上に料理を加熱する理由は、
- 産業革命後の労働者は、1日20時間近く労働しなければいけなかったので料理に時間を使う余裕がなかった。
- 劣悪な環境で生活しなければいけなかったため、とにかく加熱して殺菌していた。
ということです。
過酷な環境に耐えるために、まずい料理で我慢しなければいけなかったんですね。イギリスの暗い歴史を垣間見た気がします。
■私が経験したまずいイギリス料理
その1:オートミール(oatmeal)
燕麦を脱穀して調理しやすく加工したものです。私が食べたものは、牛乳をかけて煮られていました。私にオートミールを作ってくれたイギリス女性によると「ハチミツをかけるとさらに美味しい」ということでしたが、さらにまずくなっただけでした。
私が食べたのも、ちょうど上の写真のようにグチャっとした感じで、まったく食欲をそそられませんでした。
その2:マッシュポテト(mashed potatoes )
加熱しすぎてペショペショ。産業革命の時代と違って衛生状態はそう悪くないので、そこまで加熱する必要はないはずですが、昔の癖が抜けないようです。アガサクリスティーの小説「名探偵ポアロ」に登場するイギリス人のジャップ警部も、「イギリスの伝統的な料理だ」と言って、ペショペショのポテトをポアロさんにごちそうし、ポアロさんを閉口させるシーンがあります。
その3:フィッシュ&チップス(fish and chips)
タラなどの白身魚のフライと細長く切ったポテトを油で揚げたものです。テイクアウトの店で買ったら新聞紙に包んで渡されます。印刷用のインクが食べ物に付きますが、健康には影響ないのでしょうか?
フィッシュ・アンド・チップスは、塩や酢、ケチャップなどのソースを付けて食べます。「まずい」ということはありませんが、基本的に魚とポテトを油で揚げただけで、それ以上でもそれ以下でもありません。ケチャップなどを付けなければ、脂っこいだけで何のうま味もありません。
ちなみに、ニュージーランドではイギリス系のフィッシュアンドチップスの店より、中国人が経営するフィッシュアンドチップスの店の方が人気でした。イギリス系のお店は本当に魚とポテトだけしか置いていませんでしたが、中国人の店では、春巻き(spring roll)を揚げたものなど、品揃え豊富でした。食文化で、イギリス人が中国人に勝てるわけがないですね。
その4:マーマイト(Marmite)
黒色をしているので、一見、チョコレートのように甘い味を想像してしまいますが、一口食べてみると強い塩味がします。想像した味と実際の味がぜんぜん違うので、ショックが数倍になります。食パンにべっとりと塗って食べると美味しいということですが、日本人の口には合いません。ビタミンが豊富ということなので、留学生の栄養補給にはいいかもしれません。
その5:生のニンジン(carrot)
どうしてニンジンを生で食べるのか理解できません。野菜スティックのように細く切ったりするような一工夫すらなく、畑で取れたそのままの形で、塩もマヨネーズもドレッシングも何も付けずにポリポリと食べます。ニンジンの素材の味を堪能できます。
その6:ジャムを塗っただけのサンドイッチ(sandwich)
サンドイッチというと、ハムや卵、レタスなどを挟んでいてほしいものです。でもホストマザーが私に作ってくれたのは、薄切りの食パンにジャムを薄く塗り、もう1枚の食パンを重ね合わせただけのサンドイッチでした。日本のお母さんが子供の弁当にそんなサンドイッチを作ったら、子供は友達に見つからないように隠れて食べなければいけないことになりそうです。ジャムだけサンドイッチが普通だと知ったのは何年も後のことです。
■まとめ
イギリス料理をまずいと感じているのは、日本人だけではないようです。それどころか、イギリス人たちでさえ食事の不味さをジョークとして口にするほどです。
昔と違って、今は世界中の美味しい料理を好きなだけ食べられます。イギリス人も自分たちの料理をもっと美味しくしようと思えばできるはずなのですが、昔から続けてきた食習慣はなかなか変えられないようですね。
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